危機の日本からドイツへの視角

佐藤伸行
執筆者:佐藤伸行 2011年10月27日
エリア: ヨーロッパ

 私の年代以上の方たちであれば、「ドイツ人は日本人と知ると、『先の戦争はイタリアに足を引っ張られて負けた。次はイタリア抜きでやろうじゃないか』というジョークを言ってくる」という話を耳にしたことがあると思います。

 1990年にドイツに赴いた私はこの冗談を直接、現地のドイツ人から聞きたいものだと思っていました。

 ところが、意外なことにこれを聞く機会がありませんでした。そこで知人のドイツ人に、そもそもそんなジョークが存在したのかどうか、「実は国際的に孤独な日本人の発案した一種の都市伝説なのではないのか」と尋ねてみました。

 その答はこうでした。「ドイツはナチスの過去の清算を続けてきた。ナチと枢軸を組んだ日本と一緒に、もう一度戦争をおっぱじめようというのはジョークにしても悪趣味の度が過ぎる」。

 90年代初頭といえば、日本はまだバブル景気の余熱が残り、片やドイツは悲願の東西統一を果たしたとはいえ、予想以上に膨大な統一コストを前に、不安と恐れが蔓延していた時代でした。街には失業者があふれかえり、「ワイマール時代の再来」とも言われていました。当時のコール政権は、その頃はまだ金満国家とみなされていた日本に旧東独地域への投資を求めていましたが、日本企業の反応は鈍く、「友人のはずの日本人が助けてくれない」といった不満もドイツ側から漏れていました。そんな雰囲気が「日独友好神話」を色褪せたものにしていたのかもしれません。

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執筆者プロフィール
佐藤伸行
佐藤伸行 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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