メコン川での中国船襲撃事件に急展開

執筆者:樋泉克夫 2011年10月31日
エリア: アジア

 10月29日、中国の温家宝首相はタイのインラック首相に電話し、洪水対策での尽力を慰労すると同時に、メコン川で発生した中国人船員殺害事件に関して、タイ側の厳正な捜査と犯人の厳重処罰を求め、メコン川の安全航行を確保するための共同機構を中国・タイ・ラオス・ミャンマーの4カ国で立ち上げるべく提案したとのことだ。

 インラック首相にとって焦眉の急は洪水対策であり、温首相にどのように応えたのかは不明だ。だがメコン川の安全航行問題は、南進する中国だけでなく東南アジア諸国の今後の対中スタンスに大きな影響を与えかねない。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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