イランが核実験用の設備を設置か

執筆者:春名幹男 2011年11月6日
エリア: 中東

 国際原子力機関(IAEA)が今週、イランの核開発に関する報告書を発表する。米中央情報局(CIA)など加盟国情報機関から得たインテリジェンスを基にまとめた定期的な報告書だが、これまでに明らかにされたことがない新事実が12ページにわたる付属文書に盛り込まれている、と米報道が伝えている。
 第一点は、イランのパルチン軍事基地にバスほどの大きさのスチール製容器が配置されていることが、IAEA加盟国の偵察衛星写真から確認された事実だ。核爆発に必要な高性能爆薬の爆発実験に使われる可能性が高いとみられている。北朝鮮は1990年代、山岳地帯に月面クレーターのような多数の穴があることが偵察衛星で確認され、高性能爆薬の爆発実験を行なっていたことが分かった。
 第二点は、イランがミサイル搭載用核弾頭のコンピューターモデル開発を行なっていることだ。
 9月にIAEAの報告書が発表された際には、天野事務局長はミサイル搭載用核弾頭の技術開発に対して強い懸念を表明した。
 今回はイスラエルなどから、イランの核施設攻撃を主張する声が一層高まる可能性がある。しかし、イランのウラン濃縮は米国、イスラエルによるサイバー攻撃などで大幅に遅れている、と伝えられている。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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