農業の生産性

執筆者:平野克己 2011年11月10日
エリア: アフリカ

「ナイジェリアから追放された百万人のガーナ人が徒歩で帰還しつつあった。われわれは危機的状況にあった」
当時ガーナの農業大臣を務めていたオビンペ氏のスピーチで記憶がいっきによみがえった。アフリカの内陸国マリで先週開かれた、笹川アフリカ協会創立25周年記念シンポジウムでのことだ。

 1980年代初頭にアフリカを襲った大旱魃をきっかけにして、日本財団(当時は日本船舶振興会)の出資で、緑の革命の実行部隊がアフリカに乗り込んで食糧生産性向上運動が始まった。ジンバブエ日本大使館での任期を終えて帰国した私は、そのプロジェクトのもっとも若いメンバーとして加わった。「アフリカのハムレット」といわれていたジェリー・ローリングス率いる革命政権下のガーナは、このプロジェクトを積極的に誘致して、プロジェクトの最前線にして先端成長点になった。原油価格の急速下落でサブサハラ・アフリカ経済は崩壊寸前、なかでもオイル景気で潤ってきたナイジェリアへの影響は大きく、国民雇用対策としてナイジェリア政府は、最大の外国人労働者だったガーナ人を追放するという暴挙に出たのである。ローリングス政権は、農村の雇用吸収力と所得能力を急いで引き上げる必要に迫られていた。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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