「不動産バブル崩壊」で見えてきた中国経済「冷却」の構図

執筆者:高村悟 2011年11月11日
エリア: 中国・台湾

 中国の浙江省温州市。小型トランスなどの弱電機器や、靴、鞄、洋服、ボタン、ライターなど特定製品をつくる工場が鎮(日本で言えば町)ごとに固まって立地する世界でも特異的な産業集積地で、しかもそのほとんどが民間企業という中国では珍しい工業地帯だ。多くは輸出産業で、「世界にデフレを輸出した」と言われるほどコスト競争力が高く、多くの個人企業家が財をなした。だが、そうした温州の企業家、「温州商人」の名を中国全土、さらに世界に知らしめたのは、不動産投機である。彼らは「炒房団(野菜や肉を炒めるように不動産市況を加熱し、つり上げるグループ)」と呼ばれた。
 中国経済の勃興とともにめざましい発展を遂げた温州は今、見る影もなく、経営破綻した企業主の「夜逃げ」の街として中国のメディアで連日報道されるようになった。多くの温州企業は人民元高と工場労働者の賃金上昇で輸出競争力を失い、売り上げが落ち込むとともに、サイドビジネスとして巨額資金を運用していた不動産投資が立ちゆかなくなってきたからだ。
 温州や広東省東莞市などの工場が付加価値の低い軽工業品分野で輸出競争力を喪失しているのはもはや語るまでもないが、競争力の低下は中国の様々な産業分野、地域に広がっている。加えて今、温州を「夜逃げ」の街に変え、中国経済全体をも揺さぶっている深刻な問題は、住宅を中心とする不動産バブルの崩壊である。

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