鄧小平はシンガポールから何を学ばせようとしたのか

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2011年11月21日

 国立シンガポール大学東亞研究所の王武主席は、これまでシンガポール、マレーシア、香港、それにオーストラリアなどの大学で教壇に立ち、時に大学行政に携るなど、まさに華人ならではの人生を送っている大学人であり、東南アジアの代表的な華人オピニオン・リーダーといえるだろう。時に華人の歴史を、時に東南アジアと中国の関係を論ずるが、鄧小平が進めた改革・開放政策について、最近、「シンガポールの経験は中国から役人を派遣して詳細に研究すべきだ。直接的に学ばないまでも、少なくとも研究する必要はある。李光耀(リー・クワンユー)の成功要因のなかに中国が必要とするものがあるはずだ――李光耀に会った後で鄧小平はこう感じたと、私は理解しています」と語り、中国の現在をもたらした背景に、シンガポールの成功体験に学ぼうとした鄧小平の姿勢があるとの考えを明らかにした。

 おそらく、鄧小平の指示だろう。いまから20年ほど前の1992年7月、中国の党・政府幹部や新聞記者などで構成された赴新加坡精神文明考察団がシンガポールを訪問した。彼らは帰国後の93年1月、共産党傘下の紅旗出版社から『新加坡的精神文明』を出版している。シンガポール考察の報告書ともいえる同書によると、

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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