インド株個別銘柄、いよいよ外国個人投資家に解禁か

2011年11月26日
カテゴリ: 金融

 ムンバイ証券取引所(BSE)などに上場されているインド株の個別銘柄について、インド政府が外国人個人投資家に売買を認める規制緩和を検討していることが明らかになった。これが実現すれば、年初以来低迷している株式相場のテコ入れにつながり、企業の資金調達や証券・金融業界にとっても追い風になるものと期待されている。もちろん、日本の投資家にとっても選択の幅が広がり、我々インド研究者をはじめ同国の経済情報を扱う業界にも新たな需要がもたらされることになるので、歓迎できる措置といえるだろう。

 現在、インドでは印証券取引委員会(SEBI)に登録し、5000万ドル以上の取引を行う外国機関投資家(FII)だけに個別銘柄の取引が認められている。有力英字紙エコノミック・タイムズが財務省幹部の話として伝えたところによると、印政府はマネーロンダリング(資金洗浄)やテロリストへの資金流出を防止するガイドラインの順守を誓約して「有資格外国投資家(QFI)」のステータスを取得し、なおかつ証券会社に対する顧客情報の公開などの基準を満たした外国の個人・組織にインド株の直接売買を認める方針だ、としている。
 外国人の株買い占めによる企業支配や株価操作などを過度に警戒するインド当局の規制によって、日本人など外国人の個人投資家はインド株の個別銘柄を直接買うことができず、大手証券会社などが販売するインド株ファンドや米国預託証券(ADR)などを通じて投資するしかなかった。
 それでも、インド経済が活況に沸いた2007年前後には日本で発売されたインド株ファンドに2日間で1000億円ものお金が集まるなど、ちょっとしたインド株ブームが到来していたことを思い出す。我々にも「とにかくインド株の話を書け」「日本でインド株ファンドはどこで買えるのか?」などという発注やら質問やらが多数舞い込んできていささか当惑したものだった。
 肝心のインド株式相場は今年、金融引き締めによる金利上昇や原油価格高騰による製造業の不振などを背景に低迷。指標となるBSEの平均株価指数SENSEX30 は年初から約23%も下落している。
 企業の情報公開も決して完璧ではなく、必ずしも洗練されたマーケットとはいえないインド株式市場の動向に一喜一憂するのはあまり建設的ではないのだが、それでも政治家にとって株価は一種の「通信簿」であるのは間違いない。インド政府は何とか株式市場に海外資金を呼び込もうと今年8月、外国人投資家に対して累計100億ドルまで印国内の株式ファンドを購入することを認める規制緩和措置を発表している。また石油、電力などの優良国営企業の政府持ち株についても、今年度内に4000億ルピー(約6000億円)分を放出する予定で、何とか市場の活性化につなげたい考えだ。
 もちろん、米国の景気の先行きに不透明感が強まり、欧州の経済危機も表面化していることもあって、かつてのように日本などの投資家がいっせいにインド株に飛びつくような環境にはないのも事実だ。それでも、印個別企業の株が買えるようになれば、大きな潜在力を秘めた個性豊かなインド企業に関する投資情報の価値が大幅に高まることになるだろう。それが、インド経済への正しい理解につながればなお結構なことだと思う。(山田 剛)
 
 
インド・ムンバイ証券取引所・SENSEX30の構成銘柄
社名 業種 特徴
バジャジ・オート 自動車 二輪車、三輪車大手
バーラト重電(BHEL) 電機  
バルティ・エアテル 電気通信 携帯電話サービス最大手、11年8月時点の契約加入者数は1.7億人。アフリカ・サブサハラ16カ国でも営業中
シプラ 医薬品  
インド石炭公社(CIL) 鉱業  
DLF 住宅・不動産  
HDFC銀行 金融 HDFCの関連企業
ヒーロー・モトコープ 自動車 旧ヒーロー・ホンダ、本田技研との合弁を解消。世界最大の二輪車メーカー
ヒンダルコ 金属 アルミニウム精錬大手
ヒンドスタン・ユニリーバ FMCG 旧社名ヒンドスタン・リーバ。インドで120年の実績を持つ英蘭ユニリーバのインド現法
住宅開発金融 金融 住宅ローン大手
ICICI銀行 金融 インド最大の民間銀行、資金量約1200億ドル、国内に約2500の支店を持ち、海外18カ国に進出
インフォシス・テクノロジーズ IT インド第二位のIT会社
ITC FMCG(日用品) インド最大のタバコ会社だが、近年はホテル、紙製品、食品などに多角化
ジャイプラカシュ・アソシエイツ 住宅・不動産 インフラ開発大手。ジャイピー財閥の中核企業。建設・エンジニアリング部門が中心
ジンダル・スチール・アンド・パワー 金属  
ラーセン&トウブロ(L&T) 建設・エンジニアリング 原子力分野にも進出。中国に開閉器の工場も
マヒンドラ&マヒンドラ 自動車 多目的車大手。マヒンドラ財閥の中核企業
マルチ・スズキ 自動車 スズキのインド子会社。乗用車のシェアは45%
火力発電公社(NTPC) 電力  
石油天然ガス公社(ONGC) 石油・ガス 世界14カ国33箇所に石油・ガス権益を保有。うちロシア・サハリンやスーダン、ベトナムなど9ヵ所で生産中。国内でもムンバイ沖や東部アッサム州などに油田を保有
リライアンス・インダストリーズ 石油化学 リライアンス・グループの中核企業。11年11月時点の株式時価総額でインド首位
ステート・バンク・オブ・インディア(SBI) 金融 インド最大の商業銀行で国営。総資金量は約3200億ドル、支店数は国内1万6000、海外130
スターライト・インダストリーズ 金属  
サン・ファーマスーティカル 医薬品  
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS) IT タタ・グループ傘下。インド最大のIT企業
タタ自動車 自動車 タタ・グループ傘下。超低価格車「ナノ」で有名
タタ電力 電力  
タタ製鉄 金属 創業1907年。新日鉄と提携
ウィプロ・テクノロジーズ IT インド第3位のIT企業

 

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