ナイジェリアとアメリカ

執筆者:平野克己 2011年11月30日
エリア: アフリカ

 ンゴジ・オコンジョ=イウェアラという女性をご存じだろうか。1954年生まれの57歳。ナイジェリアの財務大臣である。

 アフリカ最大の産油国ナイジェリアはオバサンジョ元大統領の時代に資源ブームを迎え、オバサンジョが引退したのちはヤラドゥアが大統領職を継承した。ところがヤラドゥアが病に倒れ、副大統領であったグッドラック・ジョナサンが大統領に昇格。今年4月の総選挙でジョナサン政権が本格的にスタートした。世界銀行の専務職(managing director)にあったオコンジョ=イウェアラは、ジョナサン大統領に呼ばれて財務大臣に就任したのである。世銀副総裁(vice president)は32人もいるが、MDは3人しかいない。日本の官庁でいえば次官に近い役職だ。ジョナサン政権では32人もいる大臣を束ねる、実質的な「首相」といわれている。
 じつは彼女はオバサンジョ時代にも大統領に請われ、世銀副総裁職を棄てて財務大臣に就いている。だから2度目の就任だ。オバサンジョ政権では汚職追放を精力的に進め、反感をかって外務大臣にポスト替えになったあと、すぐに辞めた。大臣のなかで破格に給与が高かったことも反感の一因だったという。そんな彼女を、ゼーリック世銀総裁はMDで復職させた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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