韓国FTA戦略の光と影

執筆者:奥田聡 2011年12月9日
エリア: 朝鮮半島 日本

 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)参加議論が起きて以来、韓国の果敢な自由貿易協定(FTA)戦略が注目されるようになった。その特徴は経済・外交両面の得失を冷静に計算して交渉相手を選定し、強いリーダーシップのもとに同時多発的に展開している点である。これまでのFTA展開の成果は下の表のとおりである。日本が実績をあげていない米国や欧州連合(EU)ともすでに韓国はFTAを締結した。こうした果敢な動きの背景として大きいのが輸出先の確保である。

 韓国の国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は、52.4%(2010年)と日本の3.4倍に達する。GDPの成長率とGDPへの商品輸出の寄与率をみると、03年以降、2つの指標は連動性を強めていることがグラフから分かる。輸出の成否がGDP成長を左右しているのだ。サムスン電子の成功に見るように、技術要因やブランド力が台頭してきているのは事実である。しかし、その強みは依然「価格」であり、FTAによって生み出される価格引き下げの余地は、韓国にとって大きな魅力である。

 韓国が関与する全ての案件が発効した場合、貿易の9割がカバーされるようになる。筆者の計算では、日中米およびEUとのFTA発効で、韓国のGDP成長は2.2ポイントずつ加速される。アジア通貨危機以後の韓国経済が年間4%程度の成長を続けていることに照らしてもFTAの効果は大きい。最近ではFTAの進展を「経済領土の拡大」になぞらえる表現が使われるまでになっている。

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執筆者プロフィール
奥田聡 1963年生れ。85年一橋大学経済学部卒業、同年アジア経済研究所入所。92年UCLA経済学部修士。2000年から03年まで在ソウル海外調査員・韓国対外経済政策研究院招請研究員。03年地域研究センター東アジア研究グループ長を経て2011年から現職。05年から神田外語大学韓国語学科講師、06年から東京大学教養学部講師。専門は韓国経済、日韓経済関係、FTA等。著書として『韓国のFTA―10年の歩みと第三国への影響―』(アジア経済研究所、2010年)、『韓国主要産業の競争力 』(奥田聡・安倍誠編、アジア経済研究所、2008年)などがある。
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