通商戦略をめぐる中南米諸国のせめぎ合い―メルコスル、ボリバル同盟、「太平洋同盟」

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2011年12月27日
カテゴリ: 国際
エリア: 中南米

 チャベス大統領が、米国との対抗上の橋頭堡と位置づけ、関係国に加盟を強く働きかけてきたメルコスル(南米南部共同市場、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイで構成)へのベネズエラの正式加盟が遅れている。2006年のメルコスル首脳会議でベネズエラの加盟が合意されてから、翌年アルゼンチン、ウルグアイで、2010年にはブラジル議会でベネズエラの加盟を認める条約が批准されたものの、唯一パラグアイの上院で批准がなされていないためである。同上院は、チャベス政権の政治運営が共同市場の「民主条項」に抵触するとする理由で反対している。

 20日ウルグアイで開催されたメルコスル第42回首脳会議では、加盟承認の手続きを簡略化し、加盟国の議会承認がなくとも新規加盟を実現する方策を開催議長国のムヒカ政権の提案に基づき決議する予定であったが、議会基盤の弱いパラグアイのウゴ大統領の慎重姿勢もあり、検討のための特別委員会を設置するにとどまった。

 今回の首脳会議にはチャベス大統領も出席、ガン手術後の完全快復ぶりをアピールした。術後最初の公式外国訪問として予定していた今月10日のアルゼンチン・フェルナンデス大統領の就任式への出席を急遽取り止め、満を持してのメルコスル首脳会議への参加となった。今月初め議長国としてカラカスで開催した中南米カリブ首脳会議における南米カリブ諸国共同体(CELAC)の発足の勢いをテコに、5年越しの加盟申請問題に決着をつけ、来年の選挙での再選に向け弾みをつけたいチャベス大統領であったが、ベネズエラの正式加盟はまたも先送りされ、目論見は外れた形である。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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