動き出した習近平外交

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2011年12月27日

 金正日の急死という北朝鮮情勢の激変も、どうやら北京にとっては織り込み済みだったようだ。というのも、最悪の場合は半島有事にエスカレートしかねない突発事態の発生にもかかわらず、習近平は当初から予定されていた通り、ヴェトナムとタイ両国を訪問しているからだ。北京を発ったのは金正日の死亡が発表された翌日の12月20日。22日までヴェトナムに滞在し、タイは22日から24日まで。この間、彼は胡錦濤国家主席を差し置いて既に「新世代の国家領袖として堂々の振舞い」(あるタイの華人企業家)を見せていた。その姿は、金正日弔問に北朝鮮の在北京大使館に現れた胡主席の一種窶(やつ)れの目立つ姿とは、余りにも対照的であった。

「四好」と「十六字方針」

 20日、政府専用の特別機でハノイの空港に降り立った習近平は、タラップから一直線に伸びた真っ赤な絨毯の上を胸を張って威風堂々と進んだ。左右に控えたヴェトナムの共産党と政府の首脳陣が小柄であるだけに、習近平の大柄な体躯がやけに目立ち、それだけでも現在の両国関係を暗示しているように思えた。

 今年はカンボジアをめぐる対立を経て両国が国交を正常化して20周年の節目の年であり、同時に習は新たに選出されたヴェトナムの党・政府首脳陣を訪問する初の北京首脳である。それだけに今回の訪問結果は、今後の両国関係だけでなく、来るべき習政権における近隣外交の姿を見定めるうえで重要な判断材料となるに違いない。はたせるかな、習は空港到着直後に声明を発表し、両国の関係を「好隣居、好朋友、好同志、好夥伴(好き隣人、好き友人、好き同志、好き仲間)」の「四好」を基礎とする「十六字方針」、つまり「長期穏定、面向未来、睦隣友好、全面合作(長期安定、未来志向、善隣友好、全面協力)」で表現している。ということは、これが来るべき習近平政権における近隣諸国に対する外交方針ということだろう。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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