英英対決は「賭けも成立しない混戦」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2011年12月29日
カテゴリ: 国際
エリア: 中国・台湾
12月3日、討論会で顔を合わせた3人の候補者(左から馬、蔡、宋の各氏) (C)AFP=時事
12月3日、討論会で顔を合わせた3人の候補者(左から馬、蔡、宋の各氏) (C)AFP=時事

 12月下旬の台湾全土は、連日の冷たい雨に打たれていた。気温は10度を下回り、路上ではコートをはおってマフラーを首にまきつける人々であふれていた。新聞には「寒流来了」(寒気団が来た)の見出しが踊っていた。  だが、台湾ではその寒さを吹き飛ばすような熱気が、最終盤の総統選キャンペーンから発せられていた。先月この欄で報告したように、4年に1度行なわれる総統選は今回、「ほぼ互角」の膠着状態に陥っている。総統候補は、現職候補の国民党・馬英九、初の女性総統を目指す民進党の蔡英文、国民党との選挙協力を振り切って出馬した親民党の宋楚瑜の三人。馬英九は一時、10ポイント以上も蔡英文を引き離していたが、最新の世論調査では、互角あるいは数ポイントのリードまで蔡英文に詰め寄られている。一方、宋楚瑜の支持率は10%以下でとどまっており、当選の見込みはないが馬英九の票を食う要因になっている。

「丁半賭博」

左が馬氏、右が蔡氏の著作(筆者撮影)
左が馬氏、右が蔡氏の著作(筆者撮影)

 台湾は、野球から明日の天気まで賭けにしてしまうほど賭博が盛んな土地柄で、大型選挙は賭博組織のかき入れ時になる。総統選の度に大きな賭場が立ち、ハンデつきで票差も含めた複雑な組み合わせが賭けの対象になるのだが、今回の選挙では、票差やハンデをつけた賭けは成立しなくなっており、馬英九が勝つか蔡英文が勝つかを賭けるという単純な「丁半賭博」になっているという。選挙事情を玄人並みに理解している胴元たちでさえ、今回の総統選は読めないということであろう。  台北の巨大書店「誠品書店」敦南店をのぞいてみると、馬英九、蔡英文それぞれが選挙向けに出版した本が新刊書コーナーに隣り合って平積みにされていた。馬英九の本は「傾聴与対話」(耳を傾け、対話する)。総統として対談した16人の著名人らとの記録だ。蔡英文は「洋蔥炒蛋到小英便當」(タマネギの卵炒めから、英ちゃん弁当まで)という長いタイトルの自伝を出している。同書店の新刊書ランキングでは、馬の本が1位、蔡の本が2位。選挙と同じで、どちらも譲らない構えだ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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