金正日が死去しても北朝鮮軍は混乱しない

2011年12月28日

  北朝鮮の金正日総書記死去を受け、日本のメディアは読売新聞が「肩書も威信もない正恩氏、軍の暴発ふせげるか」と報じたのをはじめ(12月22日8時52分配信)、軍の混乱を危惧する報道が数多くなされた。

 軍隊には部隊序列や指揮系統が厳然と存在する。戦時を基本として考えられた軍規には、指揮官の不在時における指揮代行、すなわち権限の委任基準が明示されている。指揮官が不在の事態に陥った軍において、「指揮権限の所在」は、改めて考慮決定されるものではなく、間髪を入れず、自動的に委譲継承されるように定められている。金正恩による全軍に対する指揮権掌握の宣言は、当然であって驚くにあたらない。

 金正日死去の事態に直面した北朝鮮軍は混乱すると言われるが、死去直前までの軍規の厳正な維持を見る限り、混乱の発生は想像に難く、軍規の乱れを察知できる兆候も見当たらない。報道にあるような危惧が北朝鮮側に生じていれば、軍の混乱を示す情報が国外に漏えいすることもあろう。軍事が国家統制の根幹をなす北朝鮮にあって、金正日の死去を悲しむ人々の列が途絶えない光景は、軍事的な統制が今なお徹底していることの裏返しでもある。

 軍事独裁国家北朝鮮に独特な軍事的合理性を示す軍規の厳正な維持は、何をきっかけに弛緩していくと、報道は占うのだろう。現時点において、金正日の死去は、軍事的反乱によるものではなく、突然死となっている。権力継承のシナリオは、この事態を予期して周到に練られ、政治ショウとして上演されている最中である。国防委員会は、軍事力を一元的に掌握し指揮する最高軍事指導機関である。それを有する北朝鮮労働党の一党独裁支配体制の下にあって、北朝鮮軍が混乱する火種があろう筈がない。核の脅威を国益に結びつける暴力国家と呼ばれる北朝鮮の存在感は、金正日個人が有する統治能力によるものだけではない。金正恩を国家元首に置くことが、北朝鮮国民によって選択される最善策であると理解することが望ましい。

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