巨大財閥リライアンス、再統合も~「喧嘩別れ」のアンバニ兄弟が和解、協力へ

執筆者:山田剛 2012年1月1日

 

 インド財界を巻き込み、株式相場にも大きな影響を与えた主導権争いの末、大財閥リライアンス・グループを分裂させた創業者の息子2人が、和解と協力に向かって動き始めた。「2つのリライアンス」を率いる兄弟は母親の仲介で6年間に及ぶ争いに一応の終止符を打っただけでなく、事業を巡る提携や協力をも模索している。内外企業との競争が一段と激化する中、意地の張り合いよりも企業業績のための協力を選んだということだが、両者がさらに互いのシナジーを追求すれば、リライアンス・グループの再統合も現実味を帯びてくる。

兄弟の対立で大財閥が分裂
 リライアンスの創業者ディルバイ・アンバニ氏(1931―2002)は、イエメン(当時は英領アデン)への出稼ぎで得た資金を元手に母国で繊維産業を軌道に乗せ、何十万人もの一般投資家に株を保有させる手法によって資金を調達、一代でタタ、ビルラに匹敵する大財閥を築き上げた。その剛腕ぶりは、アビシェク・バッチャン、アイシュワリア・ラーイのゴールデン・カップル主演で大ヒットしたインド映画「グル」(2007年)のモデルにもなった。

  だが、ディルバイ氏の死後まもなく、グループ会長に就任した兄ムケシュ・アンバニ氏(54)に対し副会長となった弟アニル・アンバニ氏(52)が反旗を翻す形でリライアンス帝国は分裂。グループ中核企業である石油化学大手リライアンス・インダストリーズ(RIL)など重化学工業部門をムケシュ氏が、テレコムや金融、エンターテインメントなどのサービス業をアニル氏がそれぞれ引き継いで再出発することとなった。だが、その後も兄弟は事業のテリトリーなどを巡ってしばしば非難合戦を展開。豪邸の建設で張り合うなど、プライベートでもライバル意識むき出しの行動が世間を騒がせてきた。
 こうした中、故ディルバイ氏の妻でアンバニ兄弟の母親であるコキラベンさんが一昨年から兄弟の和解を仲介。2010年5月には両者がグループ分裂時に結んだ「相互不可侵協定」を事実上破棄。弟アニル氏は傘下の企業グループ名「リライアンス・アニル・ディルバイ・アンバニ・グループ(ADAG)」から自身の名を外し、「リライアンス・グループ」に変更していた。そして、ディルバイ氏の生誕80周年を控えた11年12月末、コキラベンさんは「兄弟の間にはもはや対立はない」とメディアの前で宣言。生誕祭の当日12月28日には、西部グジャラート州にあるディルバイ氏の故郷の村で宴を開いた母コキラベンさんのもとに兄弟が駆けつけ、「仲直り」をアピールした。 
 もちろん、アンバニ兄弟の「和解」の背景にはそれぞれ優れたビジネスマンとしてのしたたかな計算も見え隠れする。10年6月にインフォテル・ブロードバンドを買収して高速データ通信事業に参入した兄ムケシュ氏は、ネットワーク拡大に際して弟アニル氏率いる携帯電話サービス会社リライアンス・コミュニケーションズから基地局のうち2万6000基を使わせてもらう契約に合意。自前での巨額投資を節約することができた。また、弟アニル氏の電力・インフラビジネスも、兄ムケシュ氏のRILが掘り当てたベンガル湾のガス田からのガス供給が不可欠で、弟は兄からの便宜供与を期待することができる。さらに、将来的には兄ムケシュ傘下の小売ビジネスと弟アニル系列のエンターテインメント、弟の携帯電話販売店を通じた兄のブロードバンド会員拡大など、さまざまなコラボレーションやシナジーも見込まれる。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順