DACはアジアにとって有用か?

平野克己
執筆者:平野克己 2012年1月7日

 1月5日の日経新聞に、格付け会社フィッチ・レーティングが行ったある調査結果が出た。中国輸出入銀行が2001年から2010年までにアフリカに提供した融資額が672億ドルに上り、世界銀行の547億ドルを優に上回っていたというものである。

 1年ほど前にこの欄で、中国輸銀と中国開発銀行の対開発途上国融資のコミットメント額が、2009年と2010年合計で世銀のそれを超えたことをお伝えした。これはファイナンシャル・タイムズが独自調査で集計したものだった。ただし、このときファイナンシャル・タイムズが比較していたのは、世銀グループのなかで非ODA融資を担当している国際復興開発銀行(IBRD)の実績であった。今回のフィッチ・レーティングの調査は対アフリカ向け融資であるから、世銀グループODA機関の国際開発協会(IDA)が供与するODA、つまり有償資金協力の累積額ということになる。

 一方の中国輸銀の融資条件が、OECD開発援助委員会(DAC)が定めるODA基準に則しているかどうかはよく分からない。DACがODAと認定するのはグラント・エレメント(GE、援助における贈与相当分)が25%以上のものに限られる。無償援助はGEが100%だから文句なくODAであるが、有償資金協力の場合は金利や返済期間などの融資条件でGEが算定されるからだ。だが中国にとってみれば、そんな「神学論争」はどうでもいいことに違いない。中国の政策目標はアフリカ諸国との関係強化なのであり、ODA大国になることではない。そこが従来の日本と異なる。

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執筆者プロフィール
平野克己
平野克己 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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