インテリジェンス・ナウ
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イラク戦争はイランの陰謀? 正体見せたマリキ政権

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年1月13日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 北米

 新年だから、長期的な大きい絵を描いてみると、イラク戦争はやはりイスラム教シーア派ないしイランの陰謀だったかもしれない、と思ってしまう。
 そもそもブッシュ前米政権のラムズフェルド元国防長官ら主戦派は、アーメド・チャラビ元副首相ら当時のイラク国民会議(INC)の主張も入れてイラク戦争に踏み切った。
 現在、チャラビ氏の勢力はシーア派最大政党「イスラム最高評議会」などで構成される「イラク国民同盟」に参加、マリキ首相の「アッダワ党」などから成る「法治国家連合」と対立してはいるが、イラクの全体的状況はシーア派ないしはイランにとって望ましい方向に進展しているのである。
 昨年12月、イラク駐留米軍部隊が撤退を完了する直前、こんなことがあった。
 2007年、イラク中部カルバラで米兵5人の殺害に関与した疑いで拘束されていたシーア派民兵組織ヒズボラの司令官、アリ・ムーサ・ダクドゥク容疑者の身柄が米軍からイラク側にこっそりと引き渡された。ダクドゥク容疑者はイラン革命防衛隊の指示を受けてイラク国内で対米軍テロ工作を指揮していた。
「インテリジェンスを損なう恐れ」があるとして米側はダクドゥク容疑者訴追に必要な証拠を提出していなかった。このため、昨年末期限切れとなった米イラク地位協定の規定で、米国は同容疑者を拘束する権限を失ったという。
 これで、ダクドゥク容疑者が自由の身になるのは必至とみられる。現在のイラクとイランとの関係を象徴するような事件だった。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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