投資信託の「氷河期」がやってくる

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2012年2月20日
エリア: 日本
氷河期が来るのは時間の問題?(c)PANA
氷河期が来るのは時間の問題?(c)PANA

 日本経済新聞が1月27日に1面トップで報じた“スクープ”に投資信託業界の関係者が色めき立った。「投信 配当しすぎ歯止め」という大見出しの焦点は、「毎月分配型」と呼ばれる投信の規制を強化するため金融庁が法改正を検討しているというもの。毎月一定額を配当(分配金)として受け取れることから人気を呼び、昨年末時点で残高が約31兆円に達している大型商品だけに、規制が実現すれば投信業界に大きな影響を与えるのは必至だからだ。  記事によれば、規制強化の内容は「毎月配当の原資を運用益に限定」するというもの。現在の毎月分配型では、投信購入者が払い込んだ元本も分配の原資とすることが可能で、実際に多くの投信で元本相当部分からの配当が行なわれている。株式会社で言うところの「タコ配」だ。利益も出ていないのに配当すれば、タコが自分の足を食っているようなものだ、というので、昔から「タコ足配当」あるいは「タコ配」と呼ばれ、禁じられてきた。ところが投信は堂々とこのタコ配ができる制度になっており、これを止めようというわけだ。

気付いていない個人投資家たち

 この問題は実は根が深い。毎月の分配金が「タコ配」であることに、投信を買っている多くの個人投資家は気付いていないからだ。証券会社や銀行が投信を販売する時にきちんと説明することになっており、金融機関に聞けば必ず「きちんと説明している」という答えが返ってくる。だが現実には、購入者の多くが高齢者ということもあり、十分に理解されていない例が多いのだ。
 毎月毎月決まった配当が手に入るので、大いに得をした気分になるが、いざ資金が必要になって解約する段になると、大幅に元本が目減りしていることに気付かされる。配当という形で実際には元本を“取り崩し”ているのだから、当たり前なのだが、「こんなはずではなかった」とトラブルに発展するケースが頻発している。金融庁などにもさんざん苦情が寄せられている。
 投信業界の関係者の多くも「いずれ大問題になる」と認識してきた。しかし、売れ行き好調の商品だけに、問題を先送りしてきたきらいがある。投資家のニーズがあるというよりも、売れ行き好調で金融機関の懐を潤わせているため、販売を止められなくなっているのだ。冒頭の記事が出て、「ようやく金融庁も重い腰を上げたか」と関係者の多くが納得したのも道理だったのだ。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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