奇妙な韓国の対日硬化にインテリジェンス評価を

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年2月20日
カテゴリ: 外交・安全保障 国際
エリア: 朝鮮半島

 日本は韓国の李明博韓国政権には度々、煮え湯を飲まされている。特に、オバマ米政権発足後、韓国が日本を袖にする傾向が強まっている。野田民主党政権はそのことをどれほど認識しているのか、いないのか。日本の国益にも関わることであり、インテリジェンス的には極めて深刻な問題である。
 2年前の4月、当時の鳩山由紀夫首相が満座の各国首脳の前でオバマ大統領に恥をかかされた核安全保障サミットの最終日。米政府は第2回の同サミットを韓国で開催すると発表した。韓国には核安全保障サミットを開催する資格があるだろうか。1970年代、当時の朴政権は核兵器開発を進めた。21世紀になってからも、国際原子力機関(IAEA)に無届けでレーザーによるウラン濃縮技術を研究したこともあった。
 そして2010年11月、20カ国・地域(G20)首脳会合の開催をソウルに取られた。ブッシュ前米政権時代の2008年から始まったG20。当時の麻生政権は日本開催を申し入れたこともあったが、知らない間にソウル開催が決まっていた。ウォン安で漁夫の利を得続ける韓国は批判の対象にもならなかった。
 さらに2011年12月18日、京都迎賓館で行われた日韓首脳会談で李大統領は異常に頑なな態度を示した。野田佳彦首相が「日韓経済連携協定(EPA)の交渉を早く再開したい」と提案したにもかかわらず、大統領は「経済問題の前に、懸案である従軍慰安婦問題について話さねばならない」と全く相手にもしなかった。
 専門家は「韓国は日本とのEPAには得るものがなく、全く関心がない」と指摘するが、大統領のこんな粗野な反発の仕方は異常ではないか。野田首相が前月に環太平洋経済連携協定(TPP)参加交渉に向けた協議開始を表明したことに対する当てつけだったかもしれない。
 年明け、韓国エレクトロニクス業界が日本を凌駕した現実が統計で明らかにされた。また、トルコの原子力発電所建設受注競争でも韓国は激しく追い上げている。
 安保面でも心配な動きが見られる。韓国軍は、年明け1~2月陸上自衛隊伊丹駐屯地で行なわれた日米共同方面隊指揮所演習「ヤマサクラ」へのオブザーバー派遣を見送った。1月下旬に予定されていた金寛鎮国防相の訪日も延期になった。
 日本のメディアが伝えるように、これらはすべて従軍慰安婦問題が再燃したせいなのか。インテリジェンス分析をする必要がある。
 昨年12月14日には、同大使館前に市民団体が元従軍慰安婦を象徴した少女の銅像を設置した事件が起き、年明け1月8日には、死んだ祖母が元従軍慰安婦という奇妙な中国人(37)が在韓日本大使館に火炎瓶4本を投げ付ける事件があった。
 これら2つの事件に作為性があるのかないのか、が問題である。銅像設置は不法操業の中国漁船船長が韓国海洋警察隊員を殺傷した事件の2日後で、日韓首脳会談の3日前、火炎瓶事件は中韓首脳会談の前日のことだった。いずれも重要な政治日程の前に起きた。
 そして、韓国の反中ムードが高まると、なぜか日本の「歴史的問題」を追及する出来事が起きるというパターン。中韓関係の悪化を防ぐために、従軍慰安婦問題が利用された可能性があるのではないか。
 犯人の男は中国・広州市出身で、心理治療専門の医師と自称。昨年10月3日広州を出発、福島県で約2カ月間ボランティア活動を行った後、12月26日靖国神社の門に火炎瓶を投げつけた後出国、直ちに韓国入りしたという。これほどの反日的な人間が3カ月以上も仕事を放り出して日本でボランティア活動をするとは理解しにくい。また、そんな余裕のある行動ができる中国人はよほどの金持ちか、工作員くらいしかいないのではないか。
 在韓日本大使館への火炎瓶事件の翌日行われた中韓首脳会談は、建前論に終始したものの、中韓自由貿易協定(FTA)の締結交渉開始へ向けた準備に入ることで合意するなど、日韓首脳会談とは180度違う内容で、成果を挙げた。従軍慰安婦問題が出なかったら、中韓関係はどうなっていただろうか。
 火炎瓶事件では韓国の対応もおかしかった。事件を事前に防止できなかったのだが、釈明は外交通商省から駐韓日本大使への電話のみ。日本政府は正面から抗議すべきだったし、インテリジェンス的にも徹底調査する必要があるのではないか。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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