改革できない金食い虫・米国インテリジェンス機関の現実

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年2月28日
カテゴリ: 書評 外交・安全保障
エリア: 北米

 2001年の9・11同時多発テロ以後、スパイ・ネットワークの近代化やインテリジェンス改革に重点的に充てられたインテリジェンス予算総額は5000億ドル。全部で17機関ある米インテリジェンス・コミュニティ所属のインテリジェンス要員は総員約21万人、このうち米中央情報局(CIA)要員は世界の170カ国に配備され、ハイテク機器を駆使し、無人偵察機を操り、世界最強の情報機関を作り上げた。
 しかし、それにもかかわらず各機関の権限が重複し、官僚的怠慢から、しばしば致命的な失敗を喫している。特に深刻な問題は、ハイテク機器が収集した膨大な情報を消化できず、利用できているのはわずか1%だけ、という厳しい現実が、このほど発売されたマシュー・エイド著『インテリジェンス戦争』と題する本から浮かび上がった。
 エイド氏はワシントンの民間調査機関「国家安全保障公文書館」の客員研究員で、彼が入手したインテリジェンス機関の重要機密文書も公開された。
 そのうちの一つは、2003年9月12日付で当時のラムズフェルド米国防長官がカンボーン国防次官(情報担当)に宛てた書簡。1行目からいきなり「アフガニスタンとイラクではだれが敵で何が問題なのか、明確さの欠如が深刻だ」と問題の核心に突っ込んでいる。なら、なぜ戦争したのかと反問したいが、米軍を率いた国防長官が米国の敵が何者か分からないまま戦争を続けた実態がここに明らかにされている。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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