「国際政治」が決めるソマリアの戦死者数

白戸圭一
執筆者:白戸圭一 2012年3月10日
カテゴリ: 政治
エリア: アフリカ

 米国の官公庁の記者用メーリングリストに登録している筆者のもとには、毎日膨大な数のメールが届く。このうち国防総省から届くメールには、アフガニスタンでの米兵の戦死を伝えるメールが含まれている。どの部隊に所属する兵士がいつ、アフガンのどの地方で亡くなったかが書かれている。年齢を見ると、当然のことながら20代の若者が多い。痛ましいと言うほかない。

 個々の若者の死が把握され、公式記録として残される米国とは対照的に、米軍が軍事作戦を遂行している国の地元の人々の死は、多くの場合、記録には残らない。イラク、アフガンで亡くなった人の数は「推計」である。ましてや、まともな統計なるものが存在しないアフリカの最貧国の戦争犠牲者の数など永遠に「推計」でしかない。いや、時には犠牲者数そのものが、非情な国際政治の力学によって左右されている。

 ソマリアでは昨年9月からの3カ月間で、米国の無人機による空爆が計56回実施され、1370人以上が殺害され、そのうち少なくとも383人は民間人だった----。昨年12月、イラン国営テレビがこんな衝撃的なニュースを放送した。

 本ウェブサイトの「インテリジェンスの部屋」で春名幹男さんが度々指摘しているように、オバマ政権は無人機や特殊部隊を多用した「秘密戦争」に傾斜している。米中央情報局(CIA)の無人機による攻撃は米兵を危険にさらさず、運用コストも低い。戦費削減を図るオバマ政権が依存を深める所以だ。

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執筆者プロフィール
白戸圭一
白戸圭一 三井物産戦略研究所国際情報部 中東・アフリカ室主席研究員。京都大学大学院客員准教授。1970年埼玉県生れ。95年立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。同年毎日新聞社入社。鹿児島支局、福岡総局、外信部を経て、2004年から08年までヨハネスブルク特派員。ワシントン特派員を最後に2014年3月末で退社。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞)、共著に『新生南アフリカと日本』『南アフリカと民主化』(ともに勁草書房)など。
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