紛糾するフィリピンの駐中国大使問題

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2012年3月16日
カテゴリ: 外交・安全保障 国際

 3月14日、フィリピン国会の任用委員会はアキノ大統領が昨年5月に駐中国大使に指名した李永年を「能力不足」を理由に拒否した。任用委員会はすでに2度にわたって李の任用を拒否しており、今回が3回目。伝えられるところでは、南シナ海における主権問題、ASEAN問題、中国とフィリピンの関係などに関する委員会の質問に満足な返答が出来なかっただけでなく、英語とタガログ語による表現能力に疑問符がつけられた、とのことだ。昨年5月以来の委員会の対応からして、フィリピンの中国大使人事は先延ばしのまま推移する可能性は大きい。

 李永年は、委員会が提示した問題は十二分に理解している、ある種の専門用語がうまく使えないだけだと弁明しているが、駐中国大使人事を白紙に戻すべきだとの考えを表明する議員もいる。一方のマラカニアン大統領府には、今回の人事を白紙撤回する意思はないようだ。

 李永年は1943年生まれ。中国国民党(台湾)フィリピン総支部党員で、アキノ大統領の母親であるコラソン・アキノ元大統領在任時、駐台北マニラ経済文化弁事処主席(=駐台湾大使)を務めた。これまでフィリピンの華人企業家が駐中国大使を務めた前例もあり、今回の人事の裏側には伝えられる以外の理由があるのかも知れない。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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