饗宴外交の舞台裏 (166)

“桜外交”を支える造園家の苦労――ポトマック河畔の桜が100周年

執筆者:西川恵 2012年3月22日
植樹から100周年を迎えたワシントンの桜(c)AFP=時事
植樹から100周年を迎えたワシントンの桜(c)AFP=時事

 米国の首都ワシントンのポトマック河畔の桜が今年100周年を迎えた。1912年、日本から3000本の桜の苗木が寄贈、植樹され、日米友好親善の象徴となってきた。今年は3月末から1カ月間、ポトマック河畔を中心に、全米で例年以上に盛大に桜祭りが繰り広げられる。  米国向けはその先駆けといってもいいだろうが、「友好親善に」「日本の思い出に」「国交回復〇〇周年の記念に」と、桜の海外植樹は衰えを知らない。贈る側も政府、地方自治体、各種団体、個人寄贈などさまざまだ。「わが国にもぜひ」と外国側から求めてくることもある。  桜ほど外国に通じやすい日本のイメージはない。美しい四季と風土、日本人の生き方、平和愛好国家……。こうしたさまざまな日本のイメージを桜が象徴する。「桜を贈る」というと企業や関連団体のスポンサーも付きやすい。“桜外交”は日本の専売特許である。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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