エジプトのムスリム同胞団と軍に対立の兆し

執筆者:池内恵 2012年3月30日
タグ: 大統領選

 エジプトでは新体制への移行期の政治闘争が本格化し始めている。先週末から今週にかけて、政治プロセスの主要な勢力である、軍とムスリム同胞団の摩擦が顕在化した。これまでは両者は直接の対峙を極力避けてきた。しかし先週3月24・25日には、軍とムスリム同胞団の間で、初めてと言って良い直接的な激しいやり取りが公の場で交わされた。

 3月24日にムスリム同胞団はホームページで、軍が指名したガンズーリー内閣の失政を強く批判し、内閣を支え続ける軍をも批判した。そして政府・軍が大統領選挙を不正に操作しようとしているという疑義を強く匂わせた。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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