分水嶺・ウィスコンシンを制したロムニー

執筆者:足立正彦 2012年4月5日
エリア: 北米

 今月3日に行なわれたウィスコンシン州予備選挙でミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は得票率42.5%を獲得し、2位のリック・サントラム元上院議員(ペンシルベニア州)を4.9ポイント差で振り切って勝利を収めた。同日行なわれたメリーランド州、コロンビア特別区の予備選挙でもロムニーは勝利したが、3つの予備選挙の中でもウィスコンシン州予備選挙の勝敗は今後の共和党大統領候補選出プロセスにとり非常に重要な分水嶺であった。

 とりわけ、サントラムの今後の選挙キャンペーンにとり中西部のウィスコンシン州予備選挙の結果は重要な意味を持っていた。約1年半前に行なわれた2010年中間選挙では、全米各地でティーパーティー(茶会党)運動が興隆したが、ウィスコンシン州もその例外ではなかった。ドラスティックな州財政改革を掲げた保守系共和党州知事候補スコット・ウォーカーは、茶会党支持勢力をはじめとする保守系有権者の後押しで当選した。州知事就任後、ウォーカーは州公務員労働組合の団体交渉権などに大幅な制約を加えようとしたためにリベラル派勢力と真っ向から対立し、現在、ウォーカーのリコール運動にまで発展している。サントラムはこのように茶会党運動が活発なウィスコンシン州の予備選挙で勝利を収めることが不可欠であった。だが、ウィスコンシン州予備選挙での各メディアの出口調査では、茶会党支援勢力の間ですらロムニー支持がサントラム支持を上回る結果が明らかになった。また、サントラムの支持基盤であったキリスト教福音派の有権者の間でもロムニー支持とサントラム支持がほぼ互角となっており、もはやサントラムが保守派有権者の受け皿とはなっていないことが判明している。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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