空前の訪中ラッシュでいよいよ“緊密化”する中タイ関係

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2012年4月18日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障

 タイの最近の中国との接近ぶりは異様としか思えない。3月半ばに最大野党である民主党代表団が訪中し、共産党との提携に道を開き、4月初旬には国王に次ぐ国民的敬愛を受けているシリントーン王女が北京を訪れ、習近平副主席と会談している。これに加え4月17日から19日までは温家宝首相の要請に応じインラック首相一行が公式訪問し、25日から28日までは国防次官を代表とするタイ国軍制服組幹部代表団が人民解放軍との話し合いのために訪中――ここ1カ月ほどの間に野党、王室、政府(+経済界)、国軍と続く。両国外交史からみても、絶後とはいわないまでも、空前の訪中ラッシュであることは間違いなさそうだ。

 4月11日、中国外交部アジア司長の羅照輝はインターネットを通じ「2012年 中国のアジア外交」と題し見解を表明しているが、その中で「インラック首相就任直後、中国は特使を派遣して首相就任をお祝いし、(昨秋の)洪水に際しては及ぶ限りの援助を行なった。両国関係は極めて良好であり、『中泰一家親(両国は家族)』の心はより深まっている」と語っている。ここまでは一種の外交辞令と受け取れないこともないが、気にかかるのが首相の実兄であるタクシン元首相に対する評価だ。いわく「首相在任時しばしば訪中し、両国関係の発展に積極的に努めた。印象に残っているのは2005年、母親が住んだことのある広東を特別機で訪れ、親戚を尋ね祖先の墓参りをしていることだ。両国関係に大いに貢献した人物であり、我われにとっては決して忘れることはできない」。タクシンは丘姓を持つ客家系華人の6代目であることは知られていたが、羅司長がわざわざ母親の中国在住経験に言及したということは、タクシンが――もちろん妹であるインラック現首相も――華人であり、タクシンの一族こそ「中泰一家親」の象徴と強調したいのだろう。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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