米中協調の舞台裏、米国は中国公安当局の失態で重要インテリジェンスを入手

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年5月6日
カテゴリ: 外交・安全保障
エリア: 北米 中国・台湾

 中国当局が盲目の人権活動家、陳光誠氏(40)の米国留学を認めた。事実上の亡命承認とみてもいいだろう。なぜ、これほどスピーディに陳氏の希望を受け入れ、出国を認めたのか。

 2月の習近平中国国家副主席訪米と5月の米中戦略経済対話という重要行事を挟んで、前重慶市トップ、薄熙来氏失脚に絡む王立軍元同市副市長の米総領事館駆け込み事件、そして米大使館による陳氏の保護と難問が続いた。

 両事件とも、明らかに中国公安当局の大失態であり、米国は「政治的ダイナマイトに相当する」(ワシントン・ポスト紙)情報を得た。だが、オバマ米政権は中国の失態に付け込んで情報をリークするような手法を使わなかった。それに対して中国は、善意を示した可能性がある。

 王氏は成都の米総領事館に駆け込んだ際、薄氏夫妻の英国人実業家ニール・ヘイウッド氏殺害への関与を示す文書を携行していたと伝えられ、米総領事館員3人が王氏をデブリーフィングした。その内容は米情報コミュニティ内でシェアされたとみられる。

 陳氏は自宅軟禁されていた山東省臨沂市東師古村の家から脱出、民主化運動支援グループの助けを得て当局の監視の目をかいくぐり約550キロ離れた北京で米当局者と接触、大使館施設に入った。この間、中国側は監視網の穴や抜け道など重大な欠点を晒した。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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