胡錦濤主席の叱責――「核実験阻止」に全力を挙げる中国

平井久志
執筆者:平井久志 2012年5月15日
カテゴリ: 国際

 北朝鮮は4月11日の第4回党代表者会、同13日の最高人民会議第12期第5回会議で金正恩(キム・ジョンウン)氏を党第1書記、国防委員会第1委員長に推戴し新たな指導体制を確立すると、金永日(キム・ヨンイル)党国際部長(党政治局員候補)を団長とする代表団を4月20日から24日まで中国に派遣し、中国側と第2回戦略対話を行なった。
 中朝間の戦略対話は昨年6月10日から13日まで李源潮党組織部長(党政治局員)を団長とする中国代表団が訪朝して行なった第1回戦略対話に続くものだ。金正日(キム・ジョンイル)総書記は6月13日に李源潮部長と会見し、この会見には金正恩党中央軍事委副委員長など北朝鮮幹部も同席した。
 今回の第2回戦略対話では、北朝鮮側が党と国家の人事などを中国側に説明し、朝鮮半島情勢について突っ込んだ意見交換をしたとみられるが、当然、北朝鮮の最高指導者になった金正恩党第1書記の訪中問題も協議されたとみられる。

ニュアンスが分かれた中朝会談報道

 金永日国際部長は4月21日に自身のカウンターパートである中国の王家瑞党中央対外連絡部長と、翌22日には戴秉国国務委員と会談した。
 そして、胡錦濤国家主席が23日に金永日部長との会見に応じた。
 この会見についての北朝鮮側と中国側の報道には若干のニュアンスの差があった。
 朝鮮中央通信は「胡錦濤・中国共産党中央委員会総書記は、今後も中国は『伝統継承、未来志向、善隣友好、協力強化』の精神にのっとって、中朝友好関係の発展のために努力する」と強調し「最近、国際情勢が複雑であるが中朝友好は引き続き強固になり、発展している。伝統的な中朝友好をきわめて重視し、絶え間なく強化、発展させていくのは、中国の党と政府の確固不動の方針である」と強調したと報じた。
 一方、中国側の中国新聞社によると、胡錦濤主席は「金正恩第1書記の下、朝鮮労働党と北朝鮮政府は、必ずや北朝鮮国民を率いて団結し、奮闘できると信じている。中朝の友好協力関係を発展させることは中国共産党と中国政府の不動の方針だ」と述べた。さらに、金正恩氏が党第1書記に選出されたことに祝意を示した上で「ハイレベルの往来と党間交流を保持していこう」と語り、金正恩第1書記の訪中を促したともとれる表現を紹介した。
 しかし、中国新聞社電はその一方で胡錦濤主席が「朝鮮半島の平和と安定を維持し、北東アジアの恒久平和を実現するため、ともに努力を怠らないようにしよう」と述べたとし、間接的な言い回しで、北朝鮮に核実験を自制するよう求めたことを示唆した。
 北朝鮮側の報道は中国側が中朝友好関係をより強固にすることを確約したことを強調しているのに比べ、中国側の報道は、中国は中朝友好関係を重視し金正恩氏の訪中も歓迎するが、朝鮮半島の平和と安定を維持するためには北朝鮮が核実験などの挑発行為を自制しなければならないということを間接的な表現で求めたという点に違いがあった。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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