ベインキャピタルCEO当時のロムニーを攻撃するオバマ陣営

執筆者:足立正彦 2012年5月17日
エリア: 北米

 マサチューセッツ州ボストンに本拠地を置く世界的な投資会社であるベインキャピタルは、1984年に設立された。その設立に共和党大統領候補の指名を事実上獲得したミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が深く関わっている。最近、オバマ陣営はベインキャピタルCEO当時のロムニーの過去を執拗に蒸し返しつつ、ロムニーの経済政策では米国の中間層は益々厳しい局面に追いやられることになるといったロムニー批判を強めている。

 オバマ再選キャンペーンでは、まるで「攻撃犬」のような役割を果たしているジョゼフ・バイデン副大統領は、今月16日、ベインキャピタルCEO当時のロムニーの過去について、「中間層が失われた時代であった」との厳しいロムニー批判を行なった。そのうえで、バイデン副大統領は今年11月に投票が行なわれる米国大統領選挙は、一般の従業員の役割や公正なルール、あるいは、中間層といった価値を重視する「オバマ経済」と、一部の富裕層を政府が支援し、一般の従業員や中小企業、あるいは、地域社会が取り残されることはやむを得ないとする「ロムニー経済」という2つの全く異なる対極的な経済哲学の鮮明かつ根本的な選択になるとの見解を示した。オバマ陣営はロムニーの経済政策では中間層が重視されずに、健全な米国経済のための処方箋とはなりえないとのメッセージを有権者に発信しつつある。バイデンがこのような内容の演説を行なったのは「接戦州」の1つである中西部の主要州オハイオ州のヤングスタウンである。

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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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