キリスト教右派勢力との「和解」を図るロムニー

足立正彦
執筆者:足立正彦 2012年5月25日
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 共和党大統領候補の指名獲得を事実上確実にしたミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事にとり、今の時期は、共和党内の支持を盤石なものとし、今後、無党派層などにも支持を広げていく上で非常に重要な時期となる。また、ホワイトハウス奪還を目指して大統領本選挙キャンペーンを戦う副大統領候補の指名についても、選対本部の幹部らとともに様々な角度から真剣な検討が行なわれていると考えられる。

 キリスト教右派の指導者であった故ジェリー・ファルウェル師が40年以上前に創設した世界最大のキリスト教の大学であるリバティ大学。5月12日に行なわれた卒業式で、演説を行なったのはロムニーだった。ヴァージニア州リンチバーグにある同大学のキャンパスを訪れること自体、ロムニーにとっては初めての経験。ちょうど6年前の2006年5月上旬に行なわれた同大学の卒業式では、2008年共和党大統領候補の指名獲得を目指していたジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州)が演説している。共和党の中核的支持基盤であるキリスト教右派勢力の支持を獲得する上で、共和党有力政治家にとって同大学卒業式での演説は重要な「恒例行事」となっている。

 マケインの場合、ジョージ・W.ブッシュ・テキサス州知事(当時)と争った2000年の共和党大統領候補指名獲得争いでキリスト教右派勢力の指導者らと対立し、リバティ大学の創設者のファルウェル師らについて「不寛容な人々(“agents of intolerance”)」と批判したことがあった。2000年に続き2度目の共和党大統領候補指名獲得に挑戦しようとしていたマケインが2006年5月に行なったリバティ大学卒業式での演説は、キリスト教右派勢力の指導者との「和解」の機会となった。今回の共和党大統領候補選出プロセスでは、モルモン教徒であり、かつて人工妊娠中絶などの社会的争点で曖昧な姿勢を示したことがあるロムニーに対し、キリスト教右派勢力の指導者や有権者らは懐疑的姿勢を示した。彼らには共和党大統領候補指名獲得争いでロムニーは経済・雇用問題を重視しており、宗教問題や社会的争点についての議論は意図的に避けているとの強い不信感があった。キリスト教右派勢力の指導者は、共和党大統領候補指名獲得争いに出馬していた候補者の中では、従来から社会的争点について最も保守的立場を明らかにしていたリック・サントラム元上院議員(ペンシルベニア州)を支持するよう訴えていた。

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執筆者プロフィール
足立正彦
足立正彦 住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト。1965年生れ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より現職。米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当する。
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