エジプト大統領選挙の読み方(3)「導師と将軍の間で」

池内恵
執筆者:池内恵 2012年5月27日

 大統領選挙第一回投票の結果、「ムスリム同胞団か軍人か」という選択を突き付けられたエジプトの世論はどのような反応を示しているのだろうか。

 開票結果が明らかになった翌朝(5月26日)のエジプト各紙の見出しを斜め読みしてみよう。現地で買い集めたものを、インターネット版と比較してみるとずいぶん内容が違う場合がある。エジプトは活発な出版・新聞があるのが魅力だが、玉石混交で、かさばるしインクも悪い。しかし現地にいる時はなるべく紙のものを読んで雰囲気をつかむようにしている。

1.政府系主要紙とムスリム同胞団機関紙

『アハラーム(ピラミッド)』

 政府系紙の筆頭的な存在の『アハラーム』の一面見出しは「ムルスィーとシャフィークが6月16日の決選投票へ サッバーヒーとアブルフトゥーフとムーサの支持者は3-5位への後退にショックを受ける」といった当たり障りのないものである。頁をめくると「何が起こったのか? アブルフトゥーフとムーサが後退し、シャフィークとサッバーヒーが上昇した理由」と分析記事が載っている。

 ムスリム同胞団から離脱して立候補したアブルフトゥーフが、当初はイスラーム主義だけでなく革命派・リベラル派に支持を伸ばしたものの、超伝統主義のサラフィストのヌール党の支持を得たところでリベラル派が離れたという。サラフィストの支持層も、必ずしも政党指導者の指示に従ってアブルフトゥーフに投票したわけではない、という。またアムル・ムーサ元外相の大衆的人気は10年前のもので、今は衰えていたという。全般に議論が低調で、真っ二つに分かれた世論のどちらにつくべきか決めあぐねている様子だ。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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