金星の太陽面通過――不平等条約の改正に繋がるメキシコとの縁

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2012年6月8日
カテゴリ: 国際
エリア: 中南米

 5月の金環日食に続く「世紀の天体ショー」として、6月6日の早朝、金星の太陽面通過に注目が集った。次に日本で見られるのは実に105年後ということである。

 今回の金星の太陽面通過で、1874年にメキシコの観測隊が来日し、太陽面通過の観測に成功したということはニュースになったが、それが縁で、明治政府が念願の不平等条約の改正の突破口を築いたことに想いを寄せる報道はなかった。

 当時外交関係のなかったメキシコから観測を申し込まれた明治政府は、日本の科学者の研修を兼ねて、ディアス・コバルビアス土木次官以下5名の観測隊の入国を快く受け入れ、横浜(野毛山)での観測を許した。アメリカ、フランスに続き、観測にあたった当時のメキシコの科学技術がいかに進んでいたかを物語るものだが、独自の居留地を持ちそこでの観測を行なった列強に対し、日本政府は日本側の研修生4名の受け入れを条件に新興のメキシコからの観測隊に破格の便宜と協力を与えた。この年の12月9日は天候にも恵まれ、観測は大成功を収めた。

 観測隊を率いたコバルビアスら一行は日本側の厚遇に感激、観測後2カ月滞在し、観測と滞在の模様を記録、日本の習俗に温かい眼差しを向けた見聞録を残している(『日本旅行記』雄松堂)。そして勤勉な日本人の移住と国交関係を開くことを進言し、後の日墨関係の発展の伏線となった。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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