エジプト大統領選挙結果の「万が一」は重大な転機に

池内恵
執筆者:池内恵 2012年6月20日

 6月21日にエジプト大統領選挙の公式結果が発表される。これに向けてエジプトで緊張が高まっている。気になることが二点ある。

 第一は、ムスリム同胞団のムルスィー候補の当選確実という圧倒的多数の報道に反して、中央選挙管理委員会が「シャフィーク元首相の勝利」と発表する可能性がいまだに捨てきれないことだ。

 第二はムバーラク前大統領の健康状態である。体調悪化が伝えられており、大統領選挙結果の公式発表と新大統領への民政移管という重要な節目から目を逸らすようなタイミングで、ムバーラク死去が発表されれば、世論と政治の分裂・流動化を加速しかねない。

 ムバーラク政権崩壊後のエジプトの選挙は、「投票」そのものの自由と公開性は進んでおり、各投開票所に判事による監視や、候補者陣営の立ち会いがあり、メディアにもかなり公開されている。そのため、末端での「開票」の次元での不正・操作は考えにくい。

 ムスリム同胞団が18日未明にいち早く勝利宣言をしただけでなく、政府系のアハラーム紙も、ウェブ版のトップページで最新の開票情報を伝え続けており、結果は一致している。たとえば6月20日13時13分の時刻が記された開票状況でも、ムルスィー候補が51.73%で勝利の見通しと伝えている。投票終了直後から刻一刻伝えられた開票情報もホームページに残っており、県ごとの詳細な得票内訳も報じられている。いずれもムルスィー候補の勝利を示している。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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