世界が注目する「日本の不動産」と「政治リスク」

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2012年6月25日
エリア: 日本
東京の湾岸地区で建設が進む高層マンション(c)時事
東京の湾岸地区で建設が進む高層マンション(c)時事

 世界で不動産価格が再び上昇している。2008年のリーマンショック後は、株式などと共に大幅に下落したが、急速に戻しているのだ。金融危機に揺れる欧 州でも、ドイツやスイスの不動産に投資資金が流れ込んでいる。景気の減速が指摘されている中国でも不動産熱はなかなか冷めない。  そんな中で、世界の投資家が注目しているのが、米国と共に価格の下落傾向が止まらない日本の不動産の行方だ。世界的な超割安水準にあるものの、「政治リスク」を前に投資家は二の足を踏んでいる。

スイスの高級マンションを購入するドイツ人

 金融危機に揺れる欧州のど真ん中にあるスイスが不動産ブームに沸いている。チューリヒ湖に面した高級住宅地には新しい高級マンションが建設され、価格は軒並み2億円以上だ。スイスの不動産はこの10年、ほぼ一貫して上昇してきた。もともと供給量が少ないということもあるが、欧州統合の余波でスイスに移住する金持ちが急増。不動産を取得する例が目立っているのだ。
 そんな購入者の代表格はドイツ人。スイスは欧州連合(EU)加盟国ではないが、ヒトやモノの通行を自由化する「シェンゲン協定」に加盟している。EUとの間では国境検査も原則として撤廃されている。スイス東部はドイツ語圏ということもあり、そんな一体化の恩恵を受ける格好で、ドイツ人の移住が増えているのだ。
 ドイツが好景気に沸いていることも、ドイツ人の不動産購入を後押ししている。ドイツは欧州統合によってEU域内への輸出が大幅に増加。また、ユーロ安によって輸出採算も改善したことから、輸出産業を中心に企業業績が絶好調だ。好決算だった自動車産業では特別ボーナスを支給する動きが広がり、恩恵は企業だけでなく個人にも及んでいる。ギリシャでは再選挙の結果、財政緊縮派が勝利したとはいえ、ユーロ統合の痛みに苦しんでいる。その裏側でドイツは統合のメリットをフルに享受しているのだ。物事には表があれば、裏もあるものだ。
 ドイツ人をスイスに向かわせるもう1つの理由は税制上のメリットが大きいことだ。スイスの所得税率はドイツに比べて大幅に低いほか、多くの州では相続税もない。資産を次世代に継承することを考える企業創業者などの富豪がスイスに集まるのはこのためだ。
 スイスがユーロではなくスイスフランという独自通貨を持つことも、資産が流入する大きな理由になっている。ユーロが崩壊の危機に瀕していると騒がれれば騒がれるだけスイスフランへの資産シフトが進む。通貨安によって資産価値が減少することを避けようという、いわば資産逃避の行き先になっているのだ。

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執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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