パラグアイの政変――米州関係の変化を照らす各国の対応

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2012年7月2日
カテゴリ: 国際
エリア: 中南米

「貧者の神父」としてパラグアイで初の左派政権を誕生させたフェルナンド・ルゴ大統領が、議会上院による弾劾決議を受けて6月22日に失職した。6月15日に起きた農場を不法占拠する農民と警察との衝突で、農民11名、警官6名が死亡した責任を主に問われる形で、前日の下院での手続き開始決定を受けて弾劾されたものだ。憲法に従い真正自由党のフェデリコ・フランコ副大統領が大統領に就任したが、大統領選挙を9カ月後に控えた内陸の小国パラグアイで起きた政変は、周辺諸国から「議会によるクーデター」と非難の声が上がり、新政権の承認問題に発展する事態となった。

事実上の「クーデター」?

 ルゴ大統領は「解放の神学」の元神父。貧しい農民の支持を受け、61年間に及んだコロラド党一党支配体制に風穴を開けたのが4年前の4月に行なわれた大統領選挙。反コロラド党勢力をまとめ、貧困と不平等の戦いを掲げて中道左派の「変革の愛国同盟」から立候補し勝利した。大きな期待を背負い就任したが、コロラド党系の地主層がいぜん権勢をふるう中、政治基盤が弱く、神父時代に宿した2人の隠し子問題も発覚し、就任直後から統治能力不足に苦しんだ。公約に掲げた旧体制の汚職追及や土地無し農民に対する農地改革で成果を挙げられず、治安も悪化。支持者の失望は高まり、与党連合の真正自由党やカトリック教会の支持も失っていた。成果としてはイタイプダムのブラジルへの売電価格の引上げ交渉で09年ルラ政権から3倍にする譲歩を引き出したことぐらいで、11年には農村部で自称「パラグアイ人民軍」の武装活動も起きた。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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