中国「最高首脳」が着実に進める「中南米」外交攻勢

執筆者:遅野井茂雄 2012年7月4日
エリア: 中南米 アジア
チリのピニェラ大統領(右)と握手する温家宝首相 (C)AFP=時事
チリのピニェラ大統領(右)と握手する温家宝首相 (C)AFP=時事

 6月18-19日にロスカボス(メキシコ)でG20首脳会議が開かれ、続いて20-22日にはリオデジャネイロ(ブラジル)で、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の首脳会議が開催された。中南米で相次いで開かれた重要な首脳会議であったが、わが野田佳彦総理は消費増税法案をめぐる政局に足を取られ、メキシコでのG20首脳会議のみに出席し1泊4日のとんぼ返りで帰国。国連のリオ+20には玄葉外務大臣が出席したものの、残念ながら日本政府にはこの機会を捉えて中南米外交に目配りをする余裕や視点がまったく欠落していた。  対照的に、国連会議に出席したアフマディネジャド・イラン大統領は、ブラジルのほかに、今年2度目となるベネズエラ、ボリビアを訪問し、孤立を深める中で反米急進左派政権との同盟関係を再確認している。  中国は、胡錦濤主席がG20 に、温家宝首相がリオ+20に出席した。温首相はブラジルに続いて、ウルグアイ、アルゼンチン、チリの南米4カ国を歴訪し、この10年間の胡錦濤体制による中南米に対する中国の外交攻勢の総仕上げともいうべき足跡を残した。  

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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