馬英九政権を見舞った金銭スキャンダル

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2012年7月8日

 台北に来ているが、久々の「台湾らしい」(失礼だが)金銭スキャンダルが暴露され、1月の選挙以来、パッとしたニュースがなかった台湾のメディアは野獣が獲物を捕食するがごとくに鋭く群がり、街はこの話題で持ちきりとなっている。

話題の中心は、台湾の与党国民党の有力政治家で、日本でいえば内閣の官房長官にあたる行政院秘書長を務める林益世。

国営企業で台湾最大の製鉄会社「中国鉄鋼(中鋼)」系列のくず鉄の処理受注をめぐり、立法委員時代の2年前に、業者から6300万台湾ドル(約1.5億円)の賄賂を受け取ったという事件だ。

人気週刊誌「壱週刊」に報道されて発覚したのだが、2年前の賄賂に味をしめて、最近また契約更新のために今度は前回以上の8300万台湾ドルの賄賂を要求したところ、業者がキレて、自分が捕まることも覚悟して林益世とのカネのやりとりの録音などの証拠をもとに暴露に走ったという経緯だった。

何が面白いかといえば、賄賂で受け取った膨大なカネの成り行きだ。週刊誌の報道では、林益世は陳水扁が海外送金で足がついたことを「教訓」としたとされ、母親がニュースキャスターの妻に頼んで、カネを自宅や銀行のセーフティボックスに隠していた。週刊誌の報道で、林益世の母親は台湾ドルをビニールに包んで自宅の池に沈め、米ドルについては、1万ドル分を燃やしてしまったという。台湾では、「紙銭」と呼ばれる儀式用のニセの紙幣を定期的に先祖供養などのために燃やす習慣が根強く残っているが、林益世の母親も、紙のお金を燃やすのと同じ要領で米ドルを燃やして最後はトイレの水に流してしまったというから、話題としてはたまらなく面白いディテイルだし、同時に、不況でストレスのたまっている台湾人たちの怒りに文字どおり火をつける形となった。また、林益世や妻がテレビで陳水扁の腐敗ぶりを厳しく叩いていたことも、民進党の支持層には我慢のできないところだ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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