財政・政治統合への活路を求めるEU

渡邊啓貴
執筆者:渡邊啓貴 2012年7月11日
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 6月28・29日のEU首脳会議を終えて、EU諸機関と主要国首脳はこの会議の結果を受けて妥協の産物の成果を国に持ち帰り、一息つく間もなく様々な政策を早急に決めている。

 しかし奇妙な話である。ギリシャのEU離脱からユーロ崩壊まで市場筋では侃々諤々の議論が行なわれている一方で、EU首脳会議では欧州の財政統合・政治統合への前進の方向を確認した。そして、それを前に進めるために各国首脳は改めて頭をひねることになったからである。

 それではユーロ危機というのは投機筋の捏造だったのか。いや実際にはギリシャの財政危機は続いているし、それはギリシャ経済のさまざまな部分でのひずみを広げている。つまり、投機筋の話とEU首脳会議ではその論理が真逆なのである。ギリシャ救済なくしてユーロとEU経済の救済はできないという論法と、統合を進めてユーロを守ることによってギリシャの救済も可能だという論法の違いがそこにある。

「国境を越えたリストラ」としての欧州統合

 しかし現実には歴史的にみても後者の論法によって統合は発展してきた。欧州統合とは筆者なりの表現で言えば、「国境を越えたリストラ」なのである。統合が進むことは理想論であるように見えるが、一国で抱えきれなくなった難問を解決するための欧州諸国の苦肉の策である。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴
渡邊啓貴 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1954年生れ。パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。
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