国際論壇レビュー
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中印ブラジル経済に陰り――40年前の「成長の限界」論をもう1度考える

会田弘継
執筆者:会田弘継 2012年7月19日
カテゴリ: 国際

 中国経済の動きがかなり怪しい。
 4-6月期の国内総生産(GDP)の実質伸び率は、前年同期比で7.6%。8%を割ったのは約3年ぶりだ。しかも成長率低下が6四半期連続で続いている。
 中国政府は政策金利を2カ月連続で下げ、インフラ投資を前倒しするなど景気対策を打っている。だが、効果は疑問だ。輸出依存型の経済から脱して、内需主導に転換すべきだという議論は常に出ていたが、歩みは遅い。

「中国経済の奇跡」の終わり

 だいたい「奇跡」だの「モデル経済」だのと言われ出したら、崩壊は間近い。1980年代に「日本の奇跡」とか「日本型経済」などとさんざん誉めあげられたと思ったら、日本経済のバブルは崩壊した。中国経済バブルの崩壊も間近だというのは、米論壇屈指の若手中国分析家ミンシン・ペイだ。中国経済がダメな原因は「政治」だ、という。つまり、政治に起因する根深い構造的問題がある、とペイは米「ニューズウィーク」誌への寄稿「中国経済の奇跡の終わり」で言う。【The End Of China’s Economic Miracle, Newsweek , July 9】
 4、5月の工業生産の伸びは9%台。この10年の年平均15%という伸びに比べると大きく鈍化している。4月の電力消費の伸びは3.7%で、これも普段の半分。小売売上高は4、5月には平均14%伸びているが、個人消費のGDPに占める比率が40%台と低い中国では、それほどいいニュースでもない。
 中国政府は、ここを財政出動と政府融資で切り抜けようとするだろう。だが、政府のカネの行き先は中国経済を牛耳る国有企業、地方政府、政府と癒着した不動産開発業者だ。国有企業がそのカネで権力のネットワークを広げるだけなのは、先月紹介した「中国の企業レーニン主義」【China’s Corporate Leninism, The American Interest, May/June 2012】が描く通りだ。地方政府は「無用の長物」の建設に躍起となり、開発業者は借金の借り換えで倒産を免れるだけ(かつてのどこかの国とよく似ている)。政府債務は膨らむ一方で、すでにGDPの70-80%に達していると見られる。中国のような国民1人当たりの所得が5000ドル(約40万円)程度、しかも高齢化が急速に進む国では、債務はすでに限界に近いという。
 低迷を乗り切るには減税や貧困層への商品券配布による個人消費の拡大と、不動産開発業者の整理が必要だが、人民のことなど念頭にない共産党には無理な相談だとペイはみる。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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