キューバ民主化運動の指導者の死

執筆者:遅野井茂雄 2012年7月26日
エリア: 北米 中南米

 2002年、社会主義キューバで憲法に基づき自由選挙等の請願を国会に提出した「バレラ計画」の指導者、オスワルド・パヤ氏が交通事故で死亡した。7月24日付スペインの有力紙エルパイスによると、22日、同氏は反体制派の活動家と、スペインとスウェーデンの政治家を乗せて運転中、ハバナから800キロ離れた東部グランマ郡で路を外れて木に激突、キューバ人活動家とともに死亡した(外国人2人は軽傷)。

 パヤ氏は1988年にキリスト教解放運動(MCL)を創設した、キューバで最初の反体制派活動家。1998年のヨハネ・パウロ2世の訪問を機に民主化運動に勢いがつく中で憲法改正を求める運動を展開、言論・結社の自由、自由選挙、経済活動の自由を問う国民投票の実施を求め、2002年3月、1万1000人の署名をもって請願を国会に提出した。この「バレラ計画」は、同年キューバを訪問したカーター元米大統領も支持するところとなり、また欧州議会からサハロフ賞を授与されるなど、キューバの民主化運動の高まりを世界に印象づけた。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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