経済改革推進に新たな逆風~政治や官僚主義に揺れる「投資拡大の切り札」

執筆者:山田剛 2012年7月27日

 スズキのインド子会社、マルチ・スズキ社のマネサール工場で起きた暴動は、同社の経営だけでなくインドを注視する投資家の心理にも思った以上の影響を与えそうだ。事件の背景には、勢力巻き返しを図る左翼政党とその影響下にある労組による扇動と現場の暴走、という構図が浮かび上がる。さらには、「一度雇ったらクビにできない」硬直的な労働諸法ゆえに企業側の「契約工」採用が常態化、これが労務上の摩擦を生んでいるという点も見逃せない。騒動を煽ったとされる労組幹部への捜査は進んでいるようだが、これまでの同種の事件の顛末から考えると、なんとなくうやむやな形で終息しそうな気もする。

 この事件について現時点で多くを語るのはやや早計なので、もう少し情報が集まってから考えてみたいと思っている。

 高金利やルピー安、双子の赤字に投資の落ち込み、さらには外資・製造業振興政策の出遅れなどが重なってインド経済の減速が鮮明となる中、印政府がようやく「改革継続」に舵を切った、という話は以前も書いた。欧米諸国や内外投資家からのプレッシャーで追い込まれたマンモハン・シン首相率いる現政権は、経済成長の原動力となる外資を再び呼び込み、生産や雇用の拡大につなげるため、改革の目玉である小売市場の対外開放や輸出振興の切り札となる経済特区(SEZ)のテコ入れを目指す姿勢を再度打ち出した――というのが6月末時点での状況だった。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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