台北故宮院長の電撃辞任と日本の故宮展への影響

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2012年7月29日

 

台湾の故宮博物院のトップである周功鑫院長が突然、辞任した。台北故宮の院長は閣僚なので、騒ぎが大きくなる。昨日から今日にかけての台湾のニュースではこの電撃辞任で持ちきりだった。

拙著「ふたつの故宮博物院」を書くために、2008年の就任前から数えて7~8回はインタビューしてきたので、辞任には感慨深いところもある。

先月も台北で会ってきたばかりだったが、日本で2014年に開催が予定されいてる故宮展について、「日本からの情報が少なくて困っている。早く正式に開催を要請してもらわないと間に合わない」と焦っていた。そのときの印象では、辞任を考えているようには全く見えなかった。

台湾の新聞には、いくつか辞任の理由が出ている。

一つは、もともと大学教授だった周院長はこの7月で大学から行政機関への人材貸与期間(台湾では「借調」と呼ぶ)が期限を迎えていたことだ。

周院長は、大学を正式に辞めて故宮院長に留任するか、故宮院長を辞めて大学に戻るかの選択に迫られていて、大学に戻ることを選んだ、という説だ。周院長に一貫して批判的な立場を取ってきた民進党寄りの新聞「自由時報」は、周院長が大学の年金をもらうためには数日間は大学に戻るしかない事情があり、陳沖・行政院長(首相)に一時的に退任して大学に一カ月ほどもどってまた8月に院長に復帰する考えを提案したが、「そんな自分勝手なやり方は無理だ」ときっぱり拒否されたための辞任だという風に解説していた。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
価値あるバックナンバー
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順