ロムニーのイスラエル訪問の意味――選挙戦略かネオコン外交の兆しか?

執筆者:渡部恒雄 2012年7月31日
エリア: 北米

 米共和党のロムニー候補は、自らの外交経験不足への批判を意識し、ロンドンオリンピックに合わせて、外交能力をアピールする外遊に出た。ロンドンから、ポーランド、イスラエルを訪問したが、やはり米国人の関心はイスラエル訪問である。イスラエルのネタニヤフ首相が核開発を継続するイランへの単独軍事行動の可能性を示唆しており、オバマ政権はイスラエルの単独行動を牽制している。また、ネタニヤフ首相はオバマ大統領を嫌っているといわれており、オバマ陣営としては今回のロムニーのイスラエル訪問が気になったはずだ。

 実はロムニー候補は、1970年代にボストンコンサルティンググループでネタニヤフ首相と一緒に仕事をしたことがある旧知の仲である。うがった見方をすれば、大統領選挙直前にイスラエルが単独軍事行動に出れば、「オクトーバーサプライズ」といわれる大統領選挙の流れを変える事件にもなりかねない。この2人の関係の近さも、オバマ側にとっては気になるポイントだっただろう。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席フェロー。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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