高速鉄道事故一年の報道管制にみる過剰反応

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2012年8月1日

中国の言論統制がここ数カ月、かなり厳しくなってきている。

温州で昨年起きた中国高速鉄道の衝突事故から、この7月23日で一周年を迎えた。

中国では各メディアに対し、新華社配信など上から流される以外の原稿は使用できない通達が出され、多くのメディアが一周年に向けてじっくり準備していた原稿がボツにされた。

必ずしも今回は明確な政府批判を目指していなかったメディアも多いなかで、ここまで過敏に反応する必要があるのかと、知り合いの中国人の記者や編集者たちも首をひねった。党大会が近いこともあるが、規制する側にとにかく面倒なことはすべて書かせないでおこう、という乱暴さが最近は目立つ。

同時に強く感じたのは、読み応えのある事故一年のニュースをほとんど読めなかった中国の読者の不満だった。

というのも、新聞社で私が担当している中国語のウエブサイトに、上海駐在の記者が書いた事故現場の訪問記事をアップしたところ、ほとんど目新しい内容はなかったにもかかわらず中国からアクセスが殺到し、転載だけで500回を超えた。

サイトの書き込みには、中国政府のメディア規制に対し、「政府が社会の信用を失っている原因だ」「我々は爆発寸前」「我が国では人命尊重より党のイメージが重要なのだ」といった厳しい批判が大量に寄せられた。ネットの言論が勇ましい点は差し引いても、ストレスの高まりを感じないわけにはいかない。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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