「サーレハ後」のイエメンはどうなっているか

執筆者:池内恵 2012年8月8日

 シリアの内戦が緊迫し、アレッポへの包囲攻撃が国際的な関心を集めているが、今回は、あまり注目されることがないイエメンについて触れておきたい。イエメンでは現在重要で困難な政治プロセスが進む。独裁者とその親族・同族の取り巻きが支配する体制をどのように新体制に移行し民主化していくかという、シリアと共通の課題への取り組みをイエメンも行っている。また、過激派組織の掃討と、国家を私物化した同族支配の払拭を両立させる困難な試みという意味で、シリアが将来に直面する課題と(同じではないが)似通っている。

 BBCの国際ニュース放送も、番組ではアレッポ包囲戦に多くの時間を割いているが、ホームページを見てみると、専門家以外には見過ごされがちな情報をきちんと押さえている。「イエメンのハーディー大統領が軍の再構成に着手(Yemen's President Hadi restructures military)」という記事だ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-19166152

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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