中東―危機の震源を読む
中東―危機の震源を読む(81)

アレッポ攻防戦はアサド政権にとっての「スターリングラード」となるか(シリア内戦1)

池内恵
執筆者:池内恵 2012年8月10日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東

 シリアの北方の都市アレッポを包囲していたアサド政権が、ついに地上軍による大規模な攻撃を開始した模様である。
 政権側は、反政府勢力が過去3週間余り制圧していた地域を奪還したと主張している。先月末以来幾度も「反政府勢力の掃討を完了」と発表しながら、それが現実とはなってこなかったため、政府側の主張を額面通りには受け止められないが、アサド政権部隊がアレッポに集結して重大な局面を迎えていることは確かである。
http://www.aljazeera.com/news/middleeast/2012/08/2012888110599128.html
 http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-19176531#TWEET189519
 http://www.reuters.com/article/2012/08/08/us-syria-crisis-idUSBRE8610SH20120808
 http://www.guardian.co.uk/world/middle-east-live/2012/aug/09/syria-conflict-defection-aleppo-live
【反政府側の優勢を伝える報道
 http://www.guardian.co.uk/world/2012/aug/08/syria-rebels-aleppo-stalemate
 http://www.aljazeera.net/news/pages/510c583d-d650-4123-a93e-c82ea3ab75d9
 http://www.aljazeera.net/news/pages/9614a526-91bc-47c9-b015-8327033f9a72?GoogleStatID=1
 7月18日に首都ダマスカスで爆破攻撃が行なわれ治安機構の重要幹部が殺された【「シリア・アサド政権の中枢に及んだ爆発」】が、この前後からダマスカスとアレッポでの戦闘が激化している。
 ダマスカスでは、7月15日から激化した戦闘で、反政府軍は数多くの街区を一時掌握したが、政府軍精鋭部隊の攻撃に対しては郊外に分散して姿を隠した模様で、正面から戦わない作戦のようである。それに対して、7月19日頃から反政府勢力が急速に広い範囲に浸透したアレッポでは、政府軍の包囲攻撃に対して徹底抗戦を宣言している。
 アレッポ包囲戦の経緯と結果は特に重要な意味を持つ。
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9428011/Analysis-why-Assad-may-lose-Syria-if-he-does-not-regain-control-of-Aleppo.html
 http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9435261/Badly-armed-rebels-face-tanks-as-Syrias-mother-of-all-battles-begins.html
 反政府軍がアレッポを強固に掌握すれば、主権国家の政府としてのアサド政権の実態は乏しくなる。アレッポはシリア経済の中心であり、アレッポの経済エリート層の支持を失えばアサド政権の支持基盤が大きく損なわれ、国土全体に実効支配を取り戻すことがほぼ不可能になる。
 人口からみても、首都ダマスカスの人口が約141万人であるのに対して、アレッポは213万人【2004年。シリア中央統計局に基づく。http://www.citypopulation.de/Syria.html】。最新の数値では、首都ダマスカスとダマスカス郊外県を合わせた人口は約366万人であるが、アレッポ市と郊外を合わせたアレッポ県の人口は約592万人であり、首都圏を凌ぐ規模である。約2100万人のシリアの人口の4分の1近くを占めている【2011年初めの住民登録に基づく。シリア中央統計局。
http://www.cbssyr.org/yearbook/2011/Data-Chapter2/TAB-1-2-2011.htm
】。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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