マルチ・スズキ暴動事件で顕在化したインドの労務・政治リスク

執筆者:山田剛 2012年8月14日
放火で焼け焦げたままの工場の入り口(c)時事
放火で焼け焦げたままの工場の入り口(c)時事

 7月18日、インド北部ハリヤナ州にあるマルチ・スズキのマネサール工場で起きた労働者らによる暴動は、死者1人と100人を超える負傷者を出し、殺人未遂・器物損壊などの容疑で100人以上が逮捕されるという前例のない事態となった。日系企業によるインド進出の草分けであり、外資系製造業最大の成功例とされていたマルチを襲った事件は、インド社会や進出企業にも大きな衝撃を与えている。  インドでは金融引き締め政策の継続や通貨ルピー安、双子の赤字などで2011年以降、経済の減速が鮮明となっているが、最近も7月末にインド北部全域を巻き込んだ大停電が発生したり、農業に重大な影響を与える雨季の降水量も平年を大きく下回るなど、悪いニュースが相次いでいる。政府・産業界や内外投資家にとって頭の痛い問題だ。  事件を巡っては、暴動を企図し扇動したとされる労組幹部や労働者への取り調べが始まったようだが、インドでこの手の事件が起きた場合、捜査がなかなか進展しないばかりか、いつの間にかうやむやになってメディアも報道しなくなる、というケースが少なくない。ここでは、現在までに明らかになっている情報をもとに、現場で起きたこととその背景を分析してみたい。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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