エジプトのムルスィー大統領が果断な決定で軍政を終結させる

執筆者:池内恵 2012年8月13日

 8月12日、エジプトのムルスィー大統領が大きな動きに出た。6月末まで暫定統治を行い、ムルスィー大統領就任以後も留任してきた軍最高幹部を実質上更迭したのである。

 まったく予想されていなかった動きだが、この日の決定で、国防大臣・軍最高評議会(SCAF)議長のタンターウィー陸軍元帥と、アナーン参謀総長を即日で退役させた。そして、6月17日に出された憲法宣言追加条項を廃止すると決めた。さらに、ムバーラク政権に批判的だった著名な判事を副大統領に任命し、ムバーラク政権による政治任命でバランスを失った司法への梃入れにも着手している。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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