北朝鮮の電撃的な権力再編(上)「李英鎬解任」と「文化小革命」の背景

平井久志
執筆者:平井久志 2012年8月16日
カテゴリ: 国際
エリア: 朝鮮半島

 北朝鮮で現在起こっている現象をどう理解すればよいのだろうか。
 金正恩(キム・ジョンウン)氏が主導しているとみられる「文化小革命」的な諸現象と、その一方で進行している李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長の解任を含めた権力再編や経済改革への動きなど深刻な内部状況をどう全体的に理解すれば良いのかという問題だ。

「謎の女性」=李雪主夫人

軍視察中の北朝鮮の金正恩労働党第1書記(右)と李雪主夫人(左)(朝鮮中央通信配信)(C)AFP=時事
軍視察中の北朝鮮の金正恩労働党第1書記(右)と李雪主夫人(左)(朝鮮中央通信配信)(C)AFP=時事

 金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)時代には考えられなかったような最高指導者の破格的な行動が相次いでいる。  ▽金日成主席の命日の2日前の7月6日、金正恩氏が新たに結成された牡丹峰楽団の演奏を観覧し、金正恩氏の横に「謎の女性」が登場。  ▽牡丹峰楽団の演奏にはディズニーのミッキーマウスや米映画「ロッキー」の一場面が登場し、ミニスカートの女性が西側の曲を演奏。7月11日に朝鮮中央テレビがこの公演を録画放映。  ▽金日成主席の命日の7月8日、金主席の遺体が安置された錦繍山太陽宮殿を金正恩氏が「謎の女性」を伴って弔問。  ▽7月15日、北朝鮮メディアが金正恩氏と「謎の女性」が平壌市内の慶上幼稚園を訪問し、お互いを見つめ合うなど親密さを示す映像放映。  ▽7月21日、金正恩氏の幼年期を知る藤本健二氏が金正恩氏の招待で訪朝(藤本氏は北朝鮮のロイヤルファミリーの状況を暴露した日本人料理人)。藤本氏は8月4日まで北朝鮮に滞在し、金正恩氏は藤本氏のために約20人が参加した小宴を催す。  ▽7月25日、北朝鮮メディア、竣工が間近い綾羅人民遊園地を、金正恩氏が「謎の女性」と視察と報道。  ▽7月25日、金正恩氏が「謎の女性」と綾羅人民遊園地の竣工式出席。北朝鮮メディア、「謎の女性」を「李雪主(リ・ソルジュ)夫人」と報じ、金正恩氏が李雪主夫人と腕を組み、平壌駐在の外国外交官と「絶叫マシン」に搭乗する光景を放映。  ▽8月7日、朝鮮中央通信は金正恩氏が朝鮮人民軍第552軍部隊所属の区分隊などを視察したと伝え、同通信が配信した写真などにより李雪主夫人が軍の視察にまで同行していたことが判明。  7月26日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は6面のうち1面から5面までを前日の金正恩夫妻らの綾羅人民遊園地での写真で埋め尽くした。最後の6面の半分はこれに関連した記事だった。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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