間違いだらけの尖閣インテリジェンス

春名幹男
執筆者:春名幹男 2012年8月21日
カテゴリ: 外交・安全保障
エリア: 中国・台湾

 香港の民間団体による尖閣諸島への上陸事件。日本の新聞・テレビの報道から事態の核心が明確に理解できた人はあまりいなかったのではないか。政局が絡み、ナショナリズムに煽られて、事態は複雑化した。重大な疑問を挙げてみた。
・第1の疑問: 上陸事件は中国政府の意図とは本当に無関係だったか?

 事件を強行したのは尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張する香港の民間団体「保釣行動委員会」と報道された。しかし、中国政府は民間団体を利用することによって、日本の出方を探ることは可能である。

 今回の事件の裏には一種の秘密工作があった可能性は否定できないだろう。スパイが実行する秘密工作では通例、情報機関の関与が疑われても、もっともらしい口実で否定できる(plausibly deniable)ような設定ないしは舞台仕立てを準備する必要がある。例えば、工作員に都合の良い肩書きを与えたりする。今回の場合、表面上政府と無関係の民間団体が起こした行動であり、中国政府および中国情報機関は無関係、と否定しやすいので、非常に都合がよかったと言える。

 まずはこの団体の正体を探る必要がある。

 保釣運動は、1971年の沖縄返還協定調印を前に米国に留学中の台湾人学生が起こした運動が起源。同年1~5月ワシントンや台北でデモが起きた。彼らは台湾政府とともに、沖縄返還に伴って尖閣諸島の施政権を日本に返還しないよう、当時のニクソン米政権に要求した。当時、米国留学中の馬英九台湾総統も参加していたと言われ、根が深い。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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