ビンラディン、フセインの次はアサンジ? 英米がおびえる虚像

国末憲人
執筆者:国末憲人 2012年8月28日
エリア: ヨーロッパ ロシア

「死せる孔明生ける仲達を走らす」という三国志の故事がある。諸葛孔明の病死によって撤退しようとした蜀の軍を、魏の司馬仲達が追撃する。ところが、蜀軍は生前の孔明の言いつけを守り、敢然と反撃に出た。仲達は「孔明はまだ死んでいない」と慌てふためいて退却。仲達が恐れたのは孔明そのものでなく、孔明の虚像だった。


内部告発サイト「ウィキリークス」の創始者ジュリアン・アサンジ氏がロンドンのエクアドル大使館に立てこもった事件を見聞きして、この物語を思い出してしまった。アサンジ氏が孔明ほどの大物かどうかはともかく、勝手に恐れおののき、大騒ぎする米英は、孔明の亡霊に踊らされる仲達の姿と重なって見える。


オーストラリア出身のアサンジ氏は毀誉褒貶の激しい人物だ。2006年に「ウィキリークス」を設立し、米外交公電の暴露でその名を世界にとどろかせた。強い正義感を抱き、権力を恐れず、人脈とコンピューター技術を駆使して超大国とも対峙するその姿勢は、一部の若者たちから英雄視されている。一方で、自我が強く周囲と次々と衝突し、協力者の多くが離反した。女好きでもあり、2010年に訪れたスウェーデンで性的な関係をもった女性2人とのトラブルが今回の騒動のきっかけとなった。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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